ツルツルの五円玉 (2004年9月25日)

09 January, 2004

今日、スポーツジムの帰りに、いつもと違う道を歩いて帰った。
いつもの道の一本隣の道路に弁天神社があるのをふと思い出し、たまにはご挨拶して帰ろうと覗いてみたけど、どうもよくわかんない神社だ。

境内の半分以上が駐車場になっていて、本殿は夜は完全に閉まっており、外からお賽銭を上げることもできない。昼間出直すことにして、ついでにその隣の24時間スーパーに入った。
買い物カゴを持ってレジに清算に行くと、住宅街のスーパーの主婦バイトとはなんだか感じの違う、くたびれた感じのドス黒い顔色の小柄なオバさんがレジをやっていた。会計してからカゴを持ってレジを離れると、小学校1〜2年ぐらい?という年頃の女の子がレジにやってきた。
買い物はなく、「5円を30円に換えて下さい」と何枚かの5円玉を差し出しているもよう。

「両替はできません」
と、オバさんはマニュアル通りの返事をして、次の客の会計をしている。
まあ…普通は両替だけはしないよね…お店の規則だもんね。
女の子は長く伸びた髪をそのまま肩に垂らし、ピンクのシャツにスカート姿だった。

会計の客が終わると、女の子はまたレジに行って、
「30円にして下さい」
オバさん「換えてあげられないのよ…ごめんね…」

まあ事情は知らないが、10円玉3枚と5円玉6枚を交換してあげたからって困ることはない。これが物乞いだと、また話は違うのだが…。
「換えてあげようか」と声をかけると、女の子は諦めて出て行きかけたところだったのだが、入り口で硬い顔のままで振り返り、手招きすると戻って来た。

「30円ね…はい」
「あー…、ありがとうございます…」と、女の子は胸のなかから絞り出すような声で言い、私は「うん、いいよ…」と言ってお金を交換した。
差し出した小さな手は真っ黒だった。爪の中も汚れていた。
私も別に頓着せずに、5円玉6枚を財布の中に入れた。

レジ袋に買い物を入れ終わって外に出ると、近くの自動販売機の前にその女の子と、同じぐらいの背丈の男の子が居て、女の子が男の子に缶ジュースを手渡しているところだった。
あの5円玉はどうやって手に入れたんだろう…?道路やスーパーや自動販売機の隙間で、人が気にしない5円玉を拾い集めたのか…?それとも、親か誰かに5円なら…とねだったのを溜めていたのか…?ジュース130円のうちの100円は、あえて考えないことにするが…。

この付近は港町のダウンタウン。いろんな人種が棲んでいる。だから私も、自分の棲家としているのだが…。
レジのオバさんも含めて、人にはそれぞれ生活がある。同情も要らないし、社会的な憤りも要らない。みんなそれぞれ、そのままに生きるしかない。正しいかどうかなんて余計なことだし、小さな親切をしようなんてのも大きなお世話だ。でも、きちんと世界を見ていたいと思う。

家に帰って何となく財布の中を覗いたら、5円玉が7枚あった。元から入っていたのが一枚と、両替した6枚。あの汚れた手のイメージとはほど遠く、5円玉はツルンツルンだった。ポケットの中で握り締めていたのかなあ………なんだか、使ってしまうにしのびなくなっちゃった。

tao

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