コミュニケーション…?

25 April, 2009

シトシトと降ってますが、穏やかな柔らかい感じの雨で、こういう雨は季節の移り変わりを司る、重要な雨なのでしょう。

ワタシ的には、もっとザアザア景気よく降る土砂降りの雨が好きなのだが、あくまでも家で仕事をして、お天気を高見の見物でいられる、という前提。そんな勝手な希望はハタ迷惑ですよね。
とにかく、荒れた雨でない限り、お湿りは好きです。
今は春の土用期間なので、お天気の変化にも注意を払っていると面白いかもしれません。

仕事も落ち着いているので、家の中を片付けつつ、映画を見たり資料を整理しながら、夜更かし。今年は年間予定を立てて新しい展開ができればいいな、と思ってます。
でも夜更かしし過ぎて朝方就寝。午後、ゆっくりと起きてメールチェックや定期巡回を終えた後、近所のスーパーへ。
うーん、土曜だし通常のお買い物時間は過ぎているので、ロクな生鮮食品がない。このところ、新鮮なカツオが食べたくて鮮魚売り場をチェックしているのだが、戻りカツオやへたった刺身ばっかりで、イキのいい半身が売っていない。まあ、時期がこないと食べられない、というのは、季節感があっていいことだ。
うちは何故か、別に暮らしている家族も含めてカツオが大好きで、マグロよりもカツオが好物。高級なマグロをたまに買ってきても、2〜3切れですぐに飽きてしまうが、カツオだとモリモリ食べる。

私のカツオの食べ方は、刺身にして芥子醤油と大葉の細切りをたっぷり使う。これが一番美味しい。
世間では生姜醤油とネギがデフォになってるようだが、たぶんこれは、カツオは非常に痛みやすい魚なので、毒消しに生姜や葱を使うように推奨されているのではないかと思うが、味の点ではかなり劣る。

カツオが痛みやすいというのはほんとに顕著で、一例を挙げる。私の行ってる道場では、恒例の行事でいつも道場内ですべて皆で手作りの料理を出すが、これがケタ外れの大仕事。
道場の館長が前ずっと、築地の魚市場で荷運びをやっていた人なので、道場の宴会の時には顔を利かせ、車を出して朝、築地に食材を買出しに行く。(武道家にはけっこういるタイプ。一流大学の大学院出てるんだけど、武道に打ち込んだせいで…)
この食材がまたケタ外れなものばかりで、「カツオ一本」というのが、頭から尾まで1メートル近くあるのが来たりする。見た時には「これ、ブリじゃないの?」と言ったが、どう見てもやっぱりカツオ。鯛だっていつも、7〜80センチは優にある。
これらを、内臓だけ処理しておいて、宴会の時には皆の前に全容を披露してからさばくのだが、少ない時で6〜70人、多い時で100人を越す人達にたっぷり行き渡る量だ。
もちろん、汁物などは大鍋で作るし、非常に珍しい食材もよく出る。

ただ、この宴会というのは、道場の門人ならではの苦労があって、皆それぞれがどこに何があるか、今自分が何をすべきか、すべきでないかを常に意識していないと、到底勤まらない。集団と個人の役割というのをもの凄く意識させられる良いチャンスで、会費だけ払ってお客気分ではいられないのは当然だ。
とにかく、宴会当日は朝9時から仕込が始まり、演武と宴会と後片付けを終わるのは夜か、下手したら翌日になるので、準備と来客の送り出しまで考えると、たっぷり3日間は覚悟が要る。これだけの手間とエネルギーをかけるだけあって、味は家庭料理や商売のものとは比較にならない。

話はそれたが、門人に猫を飼っている人が居り、その人が宴会の残り物の刺身を、捨てるのも何だから、と家に持って帰り、猫にやったそうだ。
その猫は魚嫌いで、めったに魚は食べないのだそうだが、その残り物の刺身を一口食べた途端「ピャッ!!!」と言って目を丸くして一瞬ストップし、次に、凄い勢いで残りを平らげたそうだ。

それで魚が好きになったかと思い、スーパーで似た刺身を買って食べさせようとしたところ、その猫は一口食べて「ペッ」と吐き出したそうな…。

私たちは普段、猫にも劣るものを食べているのか、なんてみんな笑ったが、それほど良い食材の入る道場でも、カツオだけは例外で、カツオは残しておくことができない。
朝、築地から直接運んで来ても、一番先に鮮度が落ちてしまうので、カツオだけはその場で食べるしかない。カツオはそれだけ難しいのだ。

で、またまた話がそれたのだが、食べたいような魚がなかったので、鮮肉売り場に行き、赤味の柔らかそうなローストビーフが、夜でもあり半額になっていたのでそれを買い、せめて新鮮な感じのものをと、エシャレットと谷中生姜と茗荷を買う。
三つとも大好物で、この三種を生味噌をつけて食べれば、もう言うことはない。こちらも今日のはあんまり新鮮ではないのだが、いたし方ない。

ついでに、この季節には珍しい「もって菊」をゲット。もって菊というのは「もってのほかに美味い」という、反語を変則的に利用した独特の日本語で、文法的には正しいのかヘンなのか、よくわからないのだが、美味しいので硬いことはいいっこなし。
ちなみに、道場の館長がこの菊が大好物なので、私は稽古をサボって不義理をした時などには、見かけたらよく手土産に持ってゆくシロモノだ(笑)。

他にあんまり欲しいものもないので、ワインをちょうど切らしていたのを思い出し、酒類売り場で十勝ワインの赤を一本、カゴに入れる。
ワインも、こってりしたのが飲みたくなったり、軽いのが飲みたくなったり、その時々によって違うのだが、何を買おうか迷った時には、十勝ワインにしてしまう。国産ワインというのも最近は品質がよくなって、バカに出来ない。
特に国産ワインは、輸入物のように長い船便による輸送リスクがなく、酸化防止剤も少ない為、味にばらつきがなく悪酔いする心配もない。特に十勝ワインはフランスのワインコンクールで優勝した実績を持つだけあって、なかなか美味しい。迷った時は十勝ワインだ。

輸入物は、たまにお任せ6本入りセットを専門店から買ったりするが、原則として酒類はあまり買い置きすると飲みすぎてしまうので、飲みたい時に買う主義。私は短期間なら、ほとんど食事をしなくても、酒のカロリーだけで活動できてしまうたちなので、ちょっとこれもヤバイ。
原則として、あまり料理には時間とエネルギーは使いたくないが、出来合いや外食は嫌いなので、単純な調理や作り置きが多くなってしまう。

というわけで、大した量ではないが、それなりに入ったカゴを持ってレジへ。
レジは食品売り場には5台ほどあるが、何となく顔を知っている店員さんばかり。何ということもなく、その中の若いポッチャリした女性のレジへ行った。

レジの女性は、慣れた手つきで商品のバーコードを読み取りながら、肉類はそれぞれ薄いポリ袋に入れる。ワインは厚手の茶色の紙袋に入れ、はだけないように口のところはテープで止め、カゴに戻している。その間に、こちらは現金やらポイントカードを出す。いつもの慣れた光景だ。

で、そのまま会計していつも通りに何の違和感もなく…と思ったら…
「これ、(ワイン)別の袋に入れますか?」
とにこやかに言われたので
「あ、一緒で大丈夫ですよ。近いし」
と答えたら
「そうですか(ニコニコ)。これ、そのまま見えたらちょっと恥ずかしいですよね(ニコニコ)」

「………。」

一瞬、何のことを言っているのかと思ったのだが、一瞬固まって思考停止のまま、そのまま会計を済ませ、カゴを持って隣の台に移動した。
その頃ようやく、彼女の言っているのが、<お酒を買って帰るのが、半透明のレジ袋の中から透けて見えたら恥ずかしいでしょうから、私は気を使いました>という意味なのだろうと分かってきた。

それが分かった瞬間、また次のステージ(笑)で思考停止したまま、レジ袋に買ったものを詰め、くだんの茶色のワインの袋も一緒に入れて店を出る。

やっとその頃には思考が戻ってきて、(ああ、そうなのか…いつもの店員さんだけど、今日はいやににこやかだったし、私の前のお客さんにも、いろいろと愛想良く話かけていた。なるほど、お店の方針で接客態度のアップというか、コミュニケーション週間みたいなことをやっているのか)
と、改めてわかってきた。

こういう時に、フッと固まってしまってすぐに反応できないのが、私の欠点なのか長所なのか、よく分からないのだが、少なくとも蛍光灯であることは確か。
もっとも昨今の蛍光灯は、私みたいに反応鈍くはないが(笑)

しかし、酒を買って帰るのが恥ずかしいという認識を前提で、それを赤の他人とコミュニケーションを共有しようってのは、どうなんだろうか。

女性の中には、お酒を飲むのは会社の忘年会とか何か特別な時に限られていて、普段からお酒を飲むのは変わった人だ、という決めつけから一歩も出ていない人も多いのかもしれない。
私は夕食の時には、当たり前に食前食後に飲むし、酒をお米の御飯やパンに置き換えても、別に何の不都合もない。仕事の前やこれから運動する、という時には飲まないが、人が来た時などは昼間から飲む。あったり前の話だ。

まあ、この店員さんが世界が狭いというだけで、仕方のないことなので、全く悪く思う積もりはないが、虫の居所の悪い時には、ひょっとしたらかなりムカついたかもしれない。
人によっては「お酒買うのが恥ずかしいことなの?!私はそんなに恥ずかしいことをしてるの?何でアンタにそんなこと言われなきゃならないの?」と怒る人もいるかもしれない。

愛想よくコミュニケーション取るったって、「お酒買って帰るのが恥ずかしい」という意識を共有しようというのは、スーパーの店員の役割からは明らかに外れていると思う。壊れ物なので茶色の紙袋に入れているのに、「それを更に隠しますか?」と言っているのだから。
…と書いてきて、たまにお酒の茶色の袋を別の小さなレジ袋に入れる場合があるのは、私は重くてバランスが悪くて持ち難いからだ、とばかり思っていたのだが、ひょっとしてあれは恥ずかしいからだったのか?(笑)
別のもう少し高級なスーパーでは、紙の手提げ袋に酒の瓶の口の部分を丸見え状態で入れているが、あれは何なんだろう?

もしかしたら恥ずかしい人がいるかも知れないが、コミュニケーションを取ろうとする余り、余計なことを口に出してしまうのは、これぞフライング。たぶん当人は、全く分かっていないだろう。恥ずかしいと思う意識こそ恥ずかしいぞ…
コミュニケーションっていうのも、なかなか難しいものだと思った。

まあ、そんなことはどうでもいいのだが、後でムカついてくるといけないので、いちおうここでガス抜きをしといて(笑)、ローストビーフや他のおつまみも準備したので、くだんの十勝ワインを開け、最近買ったお気に入りの厚手ガラスのワイングラスにトポトポ…。
これから、新鮮なホタルイカとカツオの刺身が出てくるのが楽しみだ。

tao

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