うまくアガるには

20 July, 2008

昨日は杖道の東京大会で、これで自分的には夏の行事は一段落。
道場のほうはまだまだいろいろあるし、8月末の全国大会、審査会などいろいろ続くのだが、今年は不参加と決めているので、勝手に予定を終了してしまう(笑)。

今年の夏は、とっちらかった部屋の中を片付け、スイミングで体作りをしながら、落ち着いて仕事をこなしていく予定。新サイトも予定している関係で、仕事場を明るいリビングと暗い落ち着いた部屋に分離してみたので、その使い勝手にも興味がある。

大会のほう…
近年は、役員兼任になってしまった為、体調の調整に苦労して、試合はひどくテンションの低い状態が続いていた。
試合成績は自分及び道場へはね返って来るだけだが、大会役員の仕事はもっと公的なものなので、ミスは許されない。私の仕事なんかより、審判員をしている人の顔色はもっと深刻なので、今後の成り行きが恐ろしい。…次の審査と、ゆくゆくは審判講習会なんかも…?(- -;)

そういう、ノルマ的な話はいちおうスルーして、回を重ねるごとに、少しづつ、海亀の甲羅みたいにうまく年輪ができていくのが、何となくわかる。今年は少し悟るところもあった。


兼任だと調子が悪いというのは、両方に気を回さねばならないのはもちろんだが、とにかく、朝早く起きなければならない。
私の住まいから会場までは約1時間半かかるのだが、役員となるとだいたい朝8時には行っていなければならない。となると、5時起きだ。普段夜更かしで、朝5時に寝ることも珍しくない私には、調整がとても難しい。
単に行けばいいというものではなく、とても忙しくて長い一日なので、寝不足で食事やウォームアップの時間もあまり取れないというのは、ちょっと辛い。どっかで集中力がプツン、と切れてしまうと、えらいことだ。

で、この大会に参加し始めたのは平成元年…。大会というと、どうしても緊張してアガる。だから私はずっと、アガらないように、アガらないように努力してきた。

てなこと言ったって、最初のうちは、どうしてもアガる。
最初に臨んだ審査では、社会人になってから、こんなに緊張してアガりまくる場面に出くわそうとは、本当に我ながら驚いた。人の前で話したり、何かのテストを受けたりってことは誰でもそんなに珍しくないと思うのだが、何故か武道の審査や大会はとてもアガる。
会社ではそれなりの地位にあるいい大人や、常時テストに臨んでいる筈の若者が、まるっきり頭の中真っ白になって、突拍子もないことをしてみたり…最初のうちはそんなに緊張するたちでもない自分に、こんなことがあろうか…と思った。
頭で考えるだけでなく、全身を使うせいなのだろうか…???

出番が近づいてくると、胸がドキドキして掌が汗ばんでくる。木刀の柄が汗で濡れてきて、杖をスムーズに掌の中で滑らせることができなくなってくる。それでも、出てしまえば掌の汗のことなど全く綺麗に吹っ飛んでいるのだが、出場する前がすごく辛い。
こんなに緊張しまくりながらも、最初の何年間かは、けっこうな好成績を収めてきた。

しかし、役員兼任になってからは、直前まで自分の試合のことをほとんど考えないせいか、あまりアガらなくなった。時間に間に合うように試合場に駆けつけて、相棒を確認する。試合じたいから自分がお留守になっているのかもしれない。

なんだかその頃から、ほとんど勝てなくなってきた。忙しいのだから、とにかくミスをしないように平常心、平常心と自分に言い聞かせ、大きなミスをしないことを第一にして、それが何とかうまく行っているような気がしていたのだが…
ある意味、試合前に緊張してアガりまくるのも、ウォームアップのうちなのかもしれない。全くアガっていないと、テンションが低くてキレや迫力が今ひとつのような気がするのだ。

そう言えば、私の師匠も目茶目茶アガるタイプの人だ。
彼が試合に出ていた時にはぶッちぎりの強さで、得物が叩き折られたとか、折れたものが飛んでいって壁に突き刺さったとか、その試合振りは、さまざまの伝説を生み出した。
プロが大会で楯をさらってしまうのもナンだというので、ある時期から試合には出なくなったので、私よりも後輩は、師匠の試合での姿を全く見たことがない。なので、ある意味これは貴重なレポート(笑)。

私も見たのは一回きりなのだが、実はあの方がこれほどアガるのか、と内心驚いた。試合前の顔が普段とは一変している。その結果、凄い迫力でストレート勝ち。伝説の一部を垣間見る貴重な体験だった。
その時に選んで行った技を、他の機会に稽古しているのを見るにつけ、その時のイメージがまざまざと浮かび上がる。

今までは何となく、試合や審査って、これが普段のあの人か?と思う状態になるほどアガるのはカッコ悪くて、全く普段と変わらないヘーキの平左な顔でスイスイとやってしまうほうが、カッコ良いような気がしていた。

しかし、今回の大会では、その認識が少し変わった。私は久しぶりにアガッてしまったのだ。
寝不足でちょっと神経がピリピリしていたことが一つ。
自分の係の仕事を、主任が試合不出場の為、ほとんど引き受けてやってくれたのが一つ。
だいぶ、係の仕事に慣れてきたこともあるだろう。

で、久しぶりにアガッた…というよりも、アガるイコールテンションの高揚だということがよく分かり、それが不思議に心地よくて、技に集中できたので、試合にはこれでなくちゃいけないんだな…と、何となく思った。
アガると言ってもいろんなアガりかたがあるだろうが、良いあがりかたというのは、たぶん内的パワーがまだ押えられている状態で、それが爆発寸前のテンションの高まりになっている状態ではないか、なんて思う。うまく爆発できると、迫力や緊迫感が出るわけですね。
パワーないのにぶッちぎれて、ほんとにマッチロケになっちゃったら危ないけど…

同じ人前に出るのでも、話をするような時には、緊張はあまり良くない気がする。緊張のしかたにもいろいろあるのだろうが、話をする時には、いろんなことに気を配り、話にも広がりがあって面白くなければならないので、やはりリラックスが大事ではないだろうか。

しかし、武道の型試合となると…集中力が第一だ。迫力、気合、正確さで採点されるので、うーん、ここらへんの兼ね合いはなかなか難しいのだが…。
普段の稽古では、緊張の中のリラックス、リラックスの中の緊張を心がけているが、人に採点される場面では、緊迫感と迫力がないとアッピールしない。
他のスポーツのことは知らないのだが、限定されたシーンでの集中力を高めるには、ある程度の緊張も必要なのだろう。

今回は、アガるのもなかなか良いことだな、ということを学んだ。そして、アガることが力になり得るということも。今までアガッてはいけない、いけない、と自分を戒めていたものから、一つ自由になった気分だ。
そう思った時点で、試合前の一番嫌な時間が、何となく楽しかった。今後、うまくアガッてテンションをアップできればいいな、なんて考えると、楽しくなってきた。「上がる」だから、いろんなものが上がる可能性があるんだし、「アガる」を「高揚感」と表現すれば、全く印象が違う。

結果のほうは、相棒のほうが役員ではなかった為にアガりすぎていたのか(笑)、お互いに予定外のミス連発だったのだが、私は自分なりに、良い後味が残った。

真夏の稽古は、とにかく集中力が一番だ。
気温30度以上ともなると、そう長い時間は動けないので、一本一本、一挙手一投足を大切に、やり直しのないように、集中した稽古をしないと、とても体力がもたない。
武道は、年齢を経てどんどん強くなっていくのが目標だ。同じ技を稽古していても、1年で分かることと、10年で分かることと、30年で分かることは違う。
楽しくやるといっても、いろんな楽しさがあり、武道のそれは一般的に言う楽しさとか楽をすることとは対極にあるのだが、それでも楽しい。また得るものも多い。暑い時の稽古も、それはそれで楽しくやれればいいな、と思う。

tao

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