稽古と日常…

05 June, 2008

朝8時過ぎに電話がかかってきた。
電話機がすぐ横にあったので、「ハイッ」と元気に電話に出る。

「…お、早いな。まだ寝てるんじゃないかと思ったよ」
道場からである。私がこのところ稽古をサボりがちなので、夏の大会の為の打ち合わせである。
で、返事は…
「いや、これから寝るんです…」(笑)


勤め人時代は朝稽古と夜の稽古でお世話になっていたが、机にかじりついての仕事になってからは、昼間の稽古に切り替えた。

古流の専門道場なので、毎日のように違う時間帯に稽古がある。伸び盛りの者は同じ月謝で毎日たっぷり、好きなだけ稽古をすることができるが、その代わりに(と言ってはナンだが)行事や館長の留守の時には、こまごました用事を仰せつかったりする。

なにせ、昔ふうの、一派の武術の為だけに建てられた道場で、何から何まで手作りなので、とにかく玄関の戸をガラッと開ける前から状況判断ができていないと、とてもついてゆけない部分がある。マニュアルがないと動けない若者には、到底無理。
その為、年齢かかわりなく、門人にはけっこう曲者が多く、別名を「○武館梁山泊」とも言う。

同じ昼間の時間帯に来ているのは、だいたい自由業、自営業者。あるいは、道を模索している若者、というケースもある。
自営業者と言っても幅が広いが、仕事の形態にかかわらず、自分の生き方や能力や底力が仕事に影響するということを身をもって痛感している、ということが共通点か。
勤め人だと、自分の生き方なんて持っていないほうが、ある意味便利な気もするが、勤め人を真っ当することのできない私は、そういうことはとやかく言うまい。

とにかく、目の前の仕事以外の部分で自分磨きをしなければ、目の前の仕事もすぐに底が見えてしまうだろう、ということが明白に思える人達だからこそ、あんなにきつい道場に付いていっているのだと思う。

で、昼間は今のところ人数が少なく、私を含めて自営業者モノ書きなどが多いのだが、この仕事の形態に共通して言えるのは、夜中に仕事をしたほうがはかどる為に、昼夜が逆転してしまいやすいこと。

その為に、午後遅くの稽古に寝坊してしまって、思うように体が動かないので、つい行きそびれた、ということが度重なりやすい。
決まったノルマだけではよしとされない、不自由な、自由業である。

それを知っているので、不自由自由業タイプの中では、けっこうメールで様子を窺ったりする。
「今日行こうと思ったんだけど、無理に起きたらなんか体調悪くてー」
「○○日だったら館長留守だから、体慣らしにはいいよ」

自分の為に自分で選んでやっていることなのに、なんだか情けない話なのだが、雰囲気を知っている人ならたぶん分かると思う。元気つけに稽古ごとでもやるか…と思って入門したら、稽古ごとどころか完全に修行の世界だったので、実は仕事よりもずっときつかった、という世界だ。
ここらへんが、価値の分かる人には代替になるもののない場なので、きつさにいったんは遠ざかっても、また舞い戻る人がけっこう多い。

そんな道場も、館長以下幹部、高齢化してきた。高齢化というよりも、後輩が育っていないのは問題なのだが、残る者は残っているので、結局は人間の素質と縁の問題なのだろう。

今年も夏の行事を控えて、たっぷり汗を流さなければならない。否が応でも昼夜逆転はなくなるし、体力の貯金の時期かな。

tao

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