動物の話<猫社会>

05 October, 2007

知り合いが、夜中に仔猫の鳴き声を聞いて、気になって世話をしに起きてしまったという話をしていた。そしたら、同じように鳴き声を聞きつけた近所の人が集まってきてしまったそうだ。よく分かる、なんとなくのんびりした微笑ましい情景だ。

最近は野良もめっきり減ったが、前に私が猫を拾った時のことを、ちょっと感慨深く思い出してしまった。

その時私は、用足しして家に帰るのに、いつも歩かない道を歩いていた。少し辺鄙な場所で、草むらがあって雑草が茂っており、人通りは少ないが、でも車は時々通るという道だ。
歩いていると、草むらからミャーミャーとかぼそい声が聞こえてきた。明らかに仔猫だ。私はどっちかと言うと犬派、それも座敷犬は嫌いで、ビシッと精悍な大型犬が好きなので、もっさり動く軟体動物のような猫には、ほとんど興味がない。
目の前にのっそりと猫が鎮座していると「呼んだらサッサと来いよ!」と蹴飛ばしたくなってしまう。別に苦手ではないし、猫の中にはそれなりに擦り寄ってくる奴もいるので、居れば可愛がるが、猫撫で声になったりは決してしない。

そんな私の目の前に、あろうことかその草むらから仔猫が這い出してきた。
まだ目が開いていないようで、満足に歩くこともできない。草むらを覗くと、ダンボールがあるので、どうも誰かが、生まれて間もないやつを捨てたのが、自分で這い出して来たらしい。
生後どのくらいか、なんて、私にはよく分からないが、道の真ん中でミャーミャー言いながらヒコヒコしてるだけで、全然積極的な行動に移らない(当たり前)。

しかし困ったな…
このままだと、車に轢かれて猫センベイになるだけだし…
と、薄情なことを考えながら、しょうがないので片手でつまみ上げ、(う、汚ねー)となるべく体から離してぶら下げ、家まで持ち帰った(連れ帰ったとは到底言えない)。

アパートなので、当然のことながらペット禁止。二階のオバサンは大っぴらな内緒で半野良猫を飼っているが、その数がだんだん増えてくるので、鳥と金魚を飼っている私は、非常な迷惑だ。猫除けの番犬を飼いたいぐらいだ。

どうすんべか…?息子は猫好きで、しょっちゅうどっかの猫を抱っこして遊んでいるので、見たら喜ぶだろうが、私には全然飼う気はない。とりあえず車に轢かれるのをホッタラカシにしとくのも寝覚めが悪いので、しぶしぶ持ち帰っただけだ。
汚れているし、家に上げる気もしないので、とりあえず玄関の外に置き、お皿にミルクを入れてやった。その時の住まいは一階だ。

ミルクを飲み干してしまった仔猫は、またミャーミャー鳴き出した。もう薄暗くなってきた。猫は夜行性なんだから、夜になったらどっかに行って欲しいなあ……
しかし、猫の声は響くこと響くこと。二階のオバサンもさっき覗きに来ていたが、面倒なので顔は出さなかった。

どうするか見当がつかないまま、気になるのでドアを開けっぱなしで、猫の様子を見ながら家事をしていた。
すると、2〜3時間も経った頃か、声を聞きつけて、近所の猫が覗きにやって来た。少し離れた場所から、シゲシゲと様子を眺めている。(この仔はどこのやつかな?見慣れない猫だけど…)という按配で、その場の状況を見て取るやクルリときびすを返して、どっかに行ってしまった。

…と、何分もしないうちに、見慣れた猫、見知らぬ猫、団体で、猫が徒党を組んでやってきた。10何匹?……
わらわらと集まって来たのではなく、まとまって集団で、家にやって来たのだ。
げ!、こんなに沢山、近所に猫がいたっけ???

私が本当に驚いたのは、その猫軍団があまりに統制が取れていて、全体の構成図がくっきりと見て取れたことだった。はて、猫って、集団行動取るんだっけ???

中央に、体のでかい毛並みのツヤツヤした明らかなボス猫が居て、周りを他の猫が取り巻いている。さっき覗きに来た猫は斥候で、「はい、ここですよ」と、手下を従えたボス猫一同を案内してきた図だ。
ボス猫は、私が顔を出しても一瞥しただけで意に介せず、仔猫をシゲシゲと観察している。

そして、ツカツカと仔猫に近づいてその体を柔らかく口に銜え、猫軍団を従えて悠然と、元来た方へと歩み去った。

ひえ〜〜〜〜……
猫社会って、こんなだったんだ…
飼い猫、野良猫関係なく、猫社会にはちゃんと不文律みたいのがあるんだなぁ。たぶん縄張りもあって、そこに新しい猫が入って来ると、ちゃんとその仲間入りの挨拶みたいのもあったりするんだろうな。
今回は幼い捨て猫の声が聞こえてきたので、既にどっかに集まってボス猫主催の猫会議が開かれており、方針はすでに固まっていて、まず斥候を出して、次に正式に迎えに来たという図…

猫は猫に育てて貰うのが、一番いい事だ。あの捨て猫はたぶん、地域のボス猫の保護のもと、それなりに育っていくのだろう。
しかし、人間の目に見えないところに、こんなに見事な猫社会がきちんとあったとは…
「私が面倒見ないと、この子が可哀相だから…」なんて、人間の思い上がりなんだろうな、と、つくづく思ってしまった。

ボス猫さん、よろしう頼んます、が…
うちの鳥を狙う、近所でも評判の悪漢猫は、何とかならないもんですかね。
その悪猫も、さっきの仲間に入っていたけど、いつもの不敵な暴力的な臭いは影を潜め、ボス猫に付き従っていたのは見事。

tao

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